どちらの島に住みますか?

極貧国モルに住みたくないわさっ♪


どちらの島に住みますか?

首都機能が1カ所に集中しているマレ島モルディブの経済を動かし、10万人以上が住む。1周5km程度の小さな島だが、多くのバイクが行き交う。人々はどこに行くにもバイクに乗り、島の端にある家から反対端の職場まで、どんなに遠くても5〜10分もあれば着く。島内であれば職場との兼ね合いで住所を選ぶ習慣はあまりない。

 マレ島のすぐそばには、さらに小さな居住島2島がある。一つは、以前はリゾートホテル中心だった島が居住用として再開発されたビリンギリ(ビルマレ)島。もう一つは、マレの人口増加に伴い、住宅政策としてつくられた埋め立てのフルマレ島だ。マレ島とフルマレ島の間には、空港の島フルレがあり、以上の4島がモルディブの中心と言われる。といっても、首都機能があるのはやはりマレ島。居住用の島はいわゆるベッドタウンで、電話会社や商店、銀行などの支店はあるが、働ける場所は多くない。そのため、ビリンギリ島、フルマレ島に住む人の多くが毎日マレ島に通勤する。島と島の間の通勤はもちろん、フェリー。晴れた日は時折、イルカの群れを眺めながらの通勤できる。

 世界有数の人口過密都市で、家賃も高騰中のマレ島に比べ、ビリンギリ島もフルマレ島も比較的安く住める。土地の少ないマレ島は土地売買がほとんどできないのに対し、フルマレ島は2004年から居住が始まり、現在も次々と住宅が建設されている状態で、高倍率の抽選や入札によって家を持つことも夢ではない。

 移動手段のフェリーも、マレ島からビリンギリ島までは最短で10分ごとに出ており、片道の所要時間は10分、料金は約23円。フルマレ島までは約15分に1本で所要時間は20分、料金は約40円。自転車やバイクなども積める。島間の移動とはいえ、そこは海とともに暮らす国民。船は手軽な主要交通手段なのだ。

 どの島に住みたいかは国民の間でも常に意見が分かれるところだ。ビリンギリ島やフルマレ島に住居を構えれば、経済的にもおおいに助かり、交通の便も問題はない。だが、どうしてもマレ島と陸続きでない不便さを感じてか、ビリンギリ島やフルマレ島に住居を構えることに抵抗を感じるマレ市民は多く、多少家賃が高くてもマレ島人気は衰えない。

 例えば、旅行会社に勤務するFさんは、ビリンギリ島に自宅はあるがマレ島でアパート暮らし。「毎日空港に行くのでマレ島のほうが便利なんだ」。観光業が主要産業であるこの国では空港島へ働きに行く人々も多く、マレ島からは10分ごとにフェリーが運行されている(片道所要時間約15分、料金約80円)。とはいえ、緊急時にはすぐには向かえない。

 また、会社経営のKさんは、職員採用の際、ビリンギリ島在住のVさんか、マレ島住民のMさんかで迷った。「VさんとMさんどちらでも良かったんだけれど、呼び出しやすいマレ島のMさんにしたんだよ」。差別をしているわけではないが、採用の際などには、住所がマレ島ではないとお払い箱となるケースも実際にある。

 昼食時にはいつも職場から自宅へ戻ったり、夕食後にカフェへ繰り出したりする人々も多い。何かあるごとに別の島の自宅に戻るのは、やはり不便なようだ。

http://www.asahi.com/housing/world/TKY201005150192.html