「死にたくない」叫ぶ生徒

行方不明者が1人いることを同局が把握したのは「ボートが転覆した」との通報があった午後3時31分から47分が経過していた。・・・・・

「死にたくない」叫ぶ生徒 浜名湖転覆、安否確認で混乱

浜松市浜名湖で訓練中だった愛知県豊橋市立章南中学校の手こぎボートが転覆して1年の西野花菜さん(12)が死亡した事故で、ひっくり返った真っ暗なボートの中で生徒が叫ぶなか、湖に投げ出された教諭が号令をかけてボートの内側から脱出していたことが分かった。その一方で、教諭もモーターボートで助けられて現場を離れるなどしたため安否確認が混乱するなど、事故直後の様子が学校側への取材などで明らかになった。

 事故をめぐっては、波が高く生徒が体調不良を訴えたため迎えに来たモーターボートに引かれている最中、手こぎボートが転覆した疑いが強まっている。手こぎボートにはインストラクターは同乗しておらず、教諭の男女2人と生徒18人、モーターボートには「静岡県立三ケ日青年の家」の檀野清司所長(52)らが乗っていた。

 教諭から水野克昭校長が聞き取りした話によると、転覆したボートの内側には教諭と10人以上の生徒が取り残された。水は胸のあたりまできていた。呼吸はできる状態だったが、中は真っ暗だった。水位が上がってきて、「死にたくないよー」と叫ぶ生徒もいたという。教諭が「みんな、しっかりつかまって。出るよ」と叫び、「1、2の3」と号令をかけて、ボートの下から脱出したという。

 生徒とともに2人の教諭もモーターボートに引き上げられ、先に計10人が岸に戻った。亡くなった西野さんをのぞく9人の生徒は、転覆したボートの上で檀野所長が一緒に救助を待った。教諭の1人は水野校長に、「(モーターボートが)現場にまた戻ると思ったが波が非常に高く、二次被害を考えてかボートが再び出動しなかった」と話しているという。

安否確認の混乱について水野校長は、「(青年の家に引き揚げてきた人を対象に)誰がいるかを点呼で確認したが、転覆現場ではわからない状況だった」と話す。豊橋市教委は20日夜、会見で「救助先が青年の家、ホテル、病院の3カ所に分かれてしまい、全員の安否確認が遅れたのは事実だ」と説明している。

 教諭2人のうち、女性教諭は聞き取りに応じている。もう1人の男性教諭は出勤しているが体調が優れず、聞き取りができていない。水野校長は「2人から詳しく聞いて、現場で教諭がどういう判断をしたか解明しないといけないが、教諭も生徒も息も絶え絶えの状態だった」と話す。

 浜松市消防局によると、行方不明者が1人いることを同局が把握したのは18日午後4時18分。「ボートが転覆した」との通報があった午後3時31分から47分が経過していた。全員無事との情報も入り乱れる中、転覆したボートの船底にまたがって助けを待っていた生徒らの救助に向かった水難隊員が、人数を数えて確認したという。行方不明者が西野さんだとわかったのは午後4時半過ぎ。素潜りで捜索していたが、天候の悪化もあり発見できなかった。ダイバーが午後5時51分に西野さんをボートの中から発見した。

 事故があったのは18日午後で、野外教育活動の一環として手こぎボートで沖に出た4艇のうちの1艇が転覆し、約20人が投げ出された。ボートの下に取り残されていた西野さんの死亡が確認された。

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