名古屋メシ

vclub2005-07-23

名古屋メシ:どえりゃ〜、うみゃ〜〜〜!! 全国的ブームに

「名古屋メシ」が天下を取る? 独自の文化を築いてきた名古屋の「食」が、愛・地球博を追い風に、全国的なブームとなっている。みそカツ、小倉トースト……ありふれた素材同士の意外な取り合わせが、その真骨頂だ。【斉藤希史子】

 ●ひつまぶし

 社団法人・中部開発センターが名古屋圏の在住者に、観光客に勧めたい名物を尋ねたところ、筆頭に挙げられたのは「ひつまぶし」だった。

 おひつのご飯にウナギの蒲(かば)焼きを刻んで載せた“変形うな丼”が、ひつまぶし。これを三つに分けて茶わんによそい、1膳(ぜん)目はそのまま、2膳目は薬味(刻みネギやのり、わさびなど)を交ぜて食べる。仕上げは、だしをかけてお茶漬けに。「ひつ」と「まぶす」(交ぜる)が語源という。

 このひつまぶしが近年、着々と“全国制覇”を進めている。福岡では、めんたいこ入りひつまぶしが、新たな名物に。実は名古屋が発祥の地だと知らない若者もいるという。札幌市の「活鰻(いきうなぎ)」でも、ひつまぶしはお勧めメニューだ。「注文するのは女性や家族連れが多い」と店主の岡部庄司さん。

 8年前から、ひつまぶしを関東風にアレンジしている東京・浅草の「うな鉄」店主、小林昌司さんは、その人気について「自分で交ぜて食べるままごとのような楽しさがあるからではないか」と見る。

 ひつまぶしの元祖は、日本料理の老舗「あつた蓬莱(ほうらい)軒」(名古屋市熱田区)。同店の勝田茂規さんによると、まず、割れやすい丼を避けておひつが導入され、次に「会席で取り分けやすいように」と蒲焼きが刻まれた。さらに「満腹でも流し込める茶漬け」を所望する客のためにだしが付けられ、現在の形に落ち着いたらしい。

 ●みそとあん

 東京・両国で名古屋料理店「ごはち亭」を経営する山本俊夫さんは、ブームを受けてレシピ集「でらうまドラめし」(東京新聞)を出版したばかり。山本さんによると、名古屋メシの王道は「豆みそと小倉あん」だ。

 戦国の三英傑が天下統一を成し遂げたのは、兵糧として優れていた豆みそのおかげという。また、江戸時代には有数の城下町として、日本の和菓子文化をけん引した。こうした歴史が「名古屋人のDNAに、みそとあん信仰を刷り込んだ」というのが山本さんの持論。

 とんカツにみそだれをかけた「みそカツ」、喫茶店の定番「小倉トースト」……他の地域ではあり得ない取り合わせは、この「みそあん信仰」のたまものだ。斬新な発想というよりは「余った食材を、もったいないから組み合わせたのでは」と、山本さんは推測する。空前の名古屋メシブームは、「もったいない」精神への共感なのだろうか。

 金城学院大学情報文化学科の舘輝和教授(マーケティング)によると「伝統的に製造業が強い名古屋では、味が濃く栄養価の高いメニューが労働者に好まれた」。その食文化は地形的に自己完結しがちだったが、最近は経済の好調ゆえに「名古屋の元気にあやかりたい」人が全国に増えたという。「手軽で経済的、かつおいしい料理の数々は、一時のブームに終わらない底力を秘めている」と見る。

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 ●最近の名古屋名物

 <天むす>

 天丼をおにぎり化。ひつまぶしに先駆け、全国区となった。

 <あんかけスパゲティ

 トマトや肉を煮込んでとろみをつけたソースにコショウを利かせ、極太スパゲティにからめる。具はお好みで。

 <台湾ラーメン

 激辛スープが特徴。名古屋産なのになぜ「台湾」なのかは、諸説あり。

 <しるこサンド

 小豆をはさんだビスケット。松永製菓(愛知県小牧市)が1963年に開発。

毎日新聞 2005年7月22日 東京朝刊

http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/news/20050722ddm013100131000c.html