AMDがIntelを提訴
アメリカの次は日本でも!
さてどうなる?w
「国際的な不法行為へのチャレンジ」――日本AMDがインテル提訴
米AMDが米Intelを提訴したわずか2日後、日本AMDがインテル日本法人を提訴した。「AMDの技術はインテルよりも優れている」(日本AMD)との自信を背景に巨人を揺さぶる。
米AMDが米Intelを提訴した翌々日の6月30日、日本AMDはインテルを提訴した。日本AMD側は「多国籍企業の独占禁止法違反に対して、現行法の範囲でどこまでできるかというチャレンジ」と国際的な訴訟戦略でガリバーIntelに揺さぶりをかける。
日本AMDは、インテルが圧倒的な独占力を乱用して自由な競争を阻害し、消費者からCPUの選択肢を奪ったと主張。AMD製CPUが不当に排除されて損害を被ったとして6月30日、東京高裁と東京地裁にインテルを提訴した。提訴は、米本社法務部の判断で決めたという。
高裁訴訟では、インテルが公正取引委員会からの排除勧告を応諾したことを受け(関連記事参照)、独禁法25条に基づき損害賠償を請求した。地裁訴訟は、公取委の勧告内容以外にも営業妨害があったとし、民法の不法行為法(709条)に基づいて損害賠償を請求している。
請求額は合計で5500万ドル(約60億円)。高裁訴訟で5000万ドル、地裁訴訟では高裁訴訟の請求分に営業妨害行為などの賠償金500万ドルを加算した5500万ドルを請求した。金額の算定根拠は「言えない」(日本AMDの吉沢俊介取締役)が、日本AMD単体での損害額という。
「PCメーカーはインテルの言いなりにならざるを得なかった」
日本AMDが配布した訴状の要旨によると、インテルは、東芝やソニーなど国内PCメーカーに対して巨額の資金提供を行い、AMD製CPUを搭載しないよう要請し、結果的に3社のPCにはインテル製CPUのみが採用されたという。また資金提供などを条件に、PC製品カタログからAMD製CPU搭載品を削除させたり、AMD製品のプロモーションイベントを妨害。PC雑誌(廃刊)の編集者に圧力をかけ、AMD製品の記事を削除させたり、内容を修正させた──としている。
営業不振に苦しむ国内PCメーカーにとって、インテルからの資金は魅力的。インテルとの関係悪化は致命的な打撃となりうるため、言いなりにならざるを得なかった――日本AMDはこう主張する。
インテルの不法行為によって損害を被った結果、日本AMDのCPU国内販売シェアが低下したという。同社によると、数量ベースのシェアは2002年には22.2%だったが、2004年には10.1%に下がった。
「AMDの技術はインテルより上」
「インテルは、AMDの技術が強いときに圧力をかけてくる」――吉沢取締役は、AMD64への自信を匂わせた。「AMDは今、インテルよりも優れたテクノロジーを持っており、市場もそれを認めている。(AMD64の技術的優位を)ビジネス面でブロックされては困る」(吉沢取締役)提訴に関してインテルは「詳細を把握していないため現時点ではコメントできない」としている。
日本AMD・訴状の要旨
日本AMDが提出した訴状の要旨は以下の通り。
1.不法行為の概要
インテルはわが国のPC向けCPU市場において市場支配的地位を占めている企業であるが、インテルはこの市場支配的地位を濫用し、競争事業者であるAMDの製造するCPUをわが国のPC向けCPU市場から排除する目的で、以下の不法行為を行った。
(1)排除行為
1.インテルは、東芝、ソニー及び日立に対し、巨額の資金提供を行い、その製造販売するすべてのPCに搭載するCPUについて、AMD製CPUを採用しないようにさせた。その結果、現在においても東芝、ソニー、日立は、その製造販売するPCに100%インテル製CPUを採用している。
2.インテルは、NECに対し、巨額の資金提供を行い、その製造販売するPCに搭載するCPUに締めるAMD製CPUの割合を10%以下とさせた。その結果、現在においても、NECは、その製造販売するPCの90%以上にインテル製CPUを採用している。
3.インテルは、富士通に対し、その製造販売するPCのうち、複数の売れ筋シリーズについて、巨額の資金提供を行って、その生産計画を中止または変更させ、AMD製CPUを採用させないようにした。
(2)AMDへの営業妨害行為
1.インテルは、国内PCメーカーに対して、資金提供などを条件に、パソコンの製品カタログやWebサイト上から、AMD製プロセッサを搭載した製品を削除するよう指示した。
2.AMDと顧客の共同プロモーションイベント用に製造されたAMD製CPUの新製品を搭載したPCを、イベント直前にインテルが全台買い取り,インテル製CPUを搭載したPCに入れ替えさせた(その際インテルは、インテル製CPU搭載PC全台を無償で提供し,さらに宣伝費用を支給するなどした)。
3.インテルは、ラウンチイベントと呼ばれるAMD製CPUの新製品の発表会に参加を予定していた顧客に圧力をかけ、参加を辞退させた。
4.インテルは、PC雑誌の編集者に対して圧力をかけ、パソコン雑誌に掲載が予定されていたAMD製CPUに関する記事を削除させ、AMD製CPUの性能を評価する記事の内容などを修正させるなどした。
2.不法行為の背景と支配的地位の濫用
本件不法行為は、巨額の資金提供や取引相手への圧力などを手段とするが、これはインテルの市場支配的地位を不可欠の前提とする。
インテルが巨額の資金提供を手段とすることができたのは、インテルが市場支配的地位にあり、それゆえ巨大な資金力を有していたからである。営業不振に苦しむ国内PCメーカーは、インテルからの巨大な資金欲しさに、いわばインテルの言いなりとならざるを得ない状況にあった。
またインテルが、国内PCメーカーに対して圧力をかけることができたのも、インテルが市場支配的地位にあったからである。競争の激しいパソコン製造・販売業界においては、インテルから取引上不利益な処遇を受けることは、致命的な打撃となりうる。国内PCメーカーは、インテルによる報復処遇を恐れ、事実上インテルの意向に添った行動をとらざるを得ない状況にもあった。
インテルは、こうした状況を背景に、その市場支配的地位を濫用して、AMD製CPUの排除及びAMDへの営業妨害を行った。
3.不法行為の影響
本件不法行為の結果、CPUの国内販売数量のうちAMD製CPUが占める割合は、平成14年(2002年)において約22.2%であったものが、平成15年(2003年)には約14.5%、さらに平成16年(2004年)には約10.4%にまで減少し、AMDは莫大(ばくだい)な損害を被った。